モバイル/4Kチップ開発で力を発揮するDoceaの動的熱解析ツール「Thermal Profiler」
昨今、モバイルデバイスに限らず、あらゆる機器開発で無視できない「熱」の問題。チップ上の熱は消費電力にも影響を及ぼすため、設計の早期段階にシステム・レベルで熱/消費電力を見積る事が理想的だが、これまでCFDツールに代わる熱シミュレーションのためのソリューションは無かった。
しかし、仏Docea Power社のEDAツール「Thermal Profiler」は、コンパクトな熱モデルを用いてダイナミックかつ高速/高精度に設計早期段階での熱シミュレーションが可能と聞き、その詳細についてDocea社のマーケティング・ディレクター Ridha HAMZA氏に話を聞いた。
Ridha HAMZA氏によると、「Thermal Profiler」は動的なシミュレーションによってシステム・レベルで熱のプロファイリングを行うツールで、一般的なCFDツール(熱流体解析ツール)よりも1,000倍高速な熱シミュレーションが可能。従来数日要していた熱シミュレーションを数分で完了する事ができ、その精度誤差は5%程度に収めることができる。
「Thermal Profiler」の熱シミュレーションが高速なのは、Docea独自のシステム・レベルのコンパクトな熱モデルを使用しているからで、その熱モデルはCFDツールからモデルを直接インポートする事で自動生成する事が可能。余計なモデリング工数を必要としない。
また、「Thermal Profiler」が優れているのは熱シミュレーションの速度だけではない。CFDツールは一般的にワースト・ケースを想定した固定値で静的に熱を解析するのに対し、「Thermal Profiler」はシナリオに基づいた動的なシミュレーションが可能で、同社のシステムレベル・パワー・モデリング及びシミュレーション・ツール「Aceplorer」と併用することにより熱と合わせてリーク電流を解析する事も可能。解析結果を元に熱要因のデバッグを行う機能も併せ持っている。
Ridha HAMZA氏によると、「Thermal Profiler」のユースケースとして多いのが、解析対象となるチップの動作シナリオに基づいてチップ内の各所の熱を解析し、その結果を元に熱の影響を考慮しながらチップのフロアプランを検討するという手法。この手法を設計の初期段階で用いることで、熱に対する過剰なマージンを抑えるだけでなくローパワー化も実現できるため、「Thermal Profiler」は大手のモバイル・チップや4K画処理チップの開発チームなどで重宝されているとの事。
尚、「Thermal Profiler」は、チップ単体のみならず、パッケージ・レベル、ボード・レベルでの熱シミュレーションも可能で、Docea社の母国フランスの研究機関CEA-Letiでは、「Thermal Profiler」を用いて積層チップのパッケージをシミュレーションした結果、実測値にかなり近いシミュレーション結果を得る事ができたという。
ちなみに「Thermal Profiler」の想定ユーザーについてRidha HAMZA氏に聞いたところ、主なターゲット・ユーザーはシステム・アーキテクトという回答だったが、CFDツールを使う熱解析チームとシステム・アーキテクトがコラボレーションする事で「Thermal Profiler」の機能を最大限に活用できるという話で、「Thermal Profiler」は必ずしもCFDツールを置き換えるものではなく、CFDツールと補完し合うソリューションとの事だった。
※Docea Power社製品に関するお問い合わせ先:kawahara@nextream.bz