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【51DAC】Synopsysが打ち出してきた新たなIPソリューション「IP Acceleratedイニシアティブ」とは?

2014年6月1日-5日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催された第51回Design Automation Conferenceの展示会レポート。

Synopsysは例年通り今回のDACに合わせ幾つかの新ソリューションを発表していた。まずここでは新たなIPソリューション「IP Acceleratedイニシアティブ」について取り上げる。
IP Acceleratedイニシアティブに関するプレスリリース文


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※画像はSynopsysブースの様子


「IP Acceleratedイニシアティブ」は、SynopsysのIP製品を用いたSoC開発を大幅に効率化するためのソリューションで、大きく「IP Development Kit」と呼ぶ開発環境とカスタマイズ済みIPサブシステムで構成される。

IPサブシステムとしてはプロセッサ「ARCコア」をベースとした「DesignWare® Audio IP Subsystem」や「DesignWare® Sensor IP Subsystem」を既に提供していたSynopsysたが、今回の発表の目玉は、各種IPサブシステムをベースとした「IP Development Kit」だ。

「IP Development Kit」は大きく2種類あり、一つはIPサブシステムが予め実装されたHAPSベースの開発環境「DesignWare IP Prototyping Kit」でこれはハードウェア設計者およびソフトウェア開発者の双方に向けたもの。もう一つはバーチャル・プロトタイプによるソフトウェア開発環境「DesignWare IP Virtual Development Kit」でこれはソフトウェア開発者に向けたものとなる。

HAPSベースの「DesignWare IP Prototyping Kit」は、目的に応じた構成のIPリファレンス・デザインが予め実装されており、例えばPCI Expressのコントローラ及びPHYのインテグレーションやPCI ExpressとMIPIマルチプロトコルのインテグレーション、クロック/リセット回路やテスト回路、サードパーティーIPのインテグレーションなどSoCシステム構成に適合したIPの実装が可能。ARC 32-bitプロセッサ・ベースのリファレンス・デザインとLinuxのリファレンス・ドライバが用意されており、ボード上に実装されたハードウェア構成で実際にLinuxを走らせながらソフトウェア開発を行う事もできる。

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実際に見せてもらった「DesignWare IP Prototyping Kit」のデモは、HAPSボード、PHYドータカード、ARC SDPボードをケーブルで繋ぎLinuxリファレンス・ドライバの入ったSDカードを挿入してLinuxを起動するというもので、その所要時間はわずか1分。ボード環境の作成やIPリファレンス・デザインの作成、リファレンス・デザインの検証など、これまでプロトタイピングで要していた作業を同キットを使えば大幅に削減できることをアピールしていた。
※同デモはYoutubeで動画配信中 

もう一方の「DesignWare IP Virtual Development Kit」は、マルチコアARM Cortex-A57 Versatile Expressボードのモデルと各種DesignWare IPのコンフィギュアブル・モデルで構築されるバーチャル環境で、DesignWare IP向けのリファレンス・ドライバも提供されバーチャル環境上でLinaro Linuxを実行することが可能。ARM Cortex-A57ベースSoC向けのソフトウェアをSoC開発と平行してEclipseベースの環境で先行開発できる。

Synopsysはバーチャル・プロトタイプのソリューションとして「Virtualizer」を提供しているが、「DesignWare IP Virtual Development Kit」はARM Cortex-A57ベースSoC向けに完全にキット化された環境で各種DesignWare IPのコンフィギュアブル・モデルおよびドライバも提供されるのが大きな特徴となる。

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いずれのキットも当然ながら導入コストが発生するが、そのコスト以上にユーザーによる各種IPのインテグレーション・コストを削減する事が可能となり、結果としてソフトウェアを含めたSoC開発のトータル・コストを削減できるというのがSynopsysの主張で、IPプロバイダとして提供するIPをより効率的に実装できる環境を用意することで自社と顧客の利益を更に拡大するいうのがSynopsysの狙いだ。

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※画像は全てSynopsys提供のデータ


話を聞かせてくれたSynopsysのIPおよびプロトタイピング部門のJohn Koeter氏によると、今回発表した「DesignWare IP Prototyping Kit」は今のところSynopsysの提供する各種インタフェースIPのインテグレーションにフォーカスしているが、今後はリファレンス・デザインの幅を広げ「IoTプロトタイピング・キット」的なものや、社外のIPベンダとのコラボによるキットの提供なども計画しているとの事。また、ソフト開発環境としてバーチャル・プロトタイプのニーズが確実に高まってきており、先頃Synopsysがリリースしたバーチャル・プロトタイプ本「Better Software. Faster!」は既にダウンロード数1100件を突破。今後「DesignWare IP Virtual Development Kit」についてもそのラインナップを拡張していく予定と聞いた。

日本シノプシス合同会社

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =

(2014/06/17 )

 

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