MentorがQuestaとVeloceを統合した検証環境をリリース、検証の生産性を1000倍に
2014年4月11日、Mentor Graphicsは、機能検証環境「Questa」とエミュレーション環境「Veloce」を統合した新たな検証ソリューション「Mentor Enterprise Verification Platform(EVP)」を発表した。
「Mentor Enterprise Verification Platform(EVP)」は、一言で表現すると「シミュレーションライクな検証をエミュレータで実現する環境」で、エミュレータ「Veloce」に新たに用意されたオペレーティング・システム「Veloce OS3」、新たなデバッガ「Visualizer」および「Codelink」、そして「Questa」と「Veloce」の両方をサポートする新たな検証IPによって実現されている。
「EVP」の中核となる新OS「Veloce OS3」は、パワー記述フォーマット「UPF」を用いたロー・パワー検証やSystemVerilogを用いた機能カバレッジやアサーション検証など、これまで「Queesta」で行っていたシミュレーション・ベースの検証をVeloce上で実現するもので、これによりシミュレーション比1000倍の検証パフォーマンスを達成。「Veloce」のリソースを使って検証作業を大幅に効率化する事ができる。
また「EVP」では、その優れた「Veloce」の検証パフォーマンスを複数プロジェクト・複数拠点(ユーザー)で利用するためのリソース管理機能「Veloce OS3 Enterprise Server」が新たに用意され、同機能を利用することで複数の「Veloce」のリソースを考慮して複数のジョブを優先順位を付けて効率的に振り分けて処理する事ができるようになった。この「Veloce」のリソースを有効活用する仕組みは、「Veloce2」から導入された「VirtuaLab」と呼ばれるソフトウェア・ベースのペリフェラル・モデルの技術によって実現されるもので、データ・センターのホスト・マシン上で稼働する「VirtuaLab」を利用することにより、「Veloce」で走らせるジョブに応じてコンフィギュレーションを即時自動変更できるようになっている。
「EVP」のデバッグ環境としては、まずハード設計向けのデバッガとして新たに「Visualizer」が用意された。これまでは「Questa」と「Veloce」ではそれぞれ異なるデバッグ環境を使用していたが、「Visualizer」は「Questa」でも「Veloce」でも共通して利用でき、テストベンチ側はUVMのクラスベースのデバッグ、デザイン側はSystemCやHDL+UPFのデバッグ、トランザクションレベルでのデバッグが可能。ダンプされるデバッグ用データベースが非常に小さく、オフラインでコーズ解析なども可能な点も特徴の一つとなる。
ソフトウェア開発用のデバッガとしては、既存の「Codelink」が「Questa」および「Veloce」の共通デバッガとして機能するようになった。これによりソフトウェアのデバッグにおいて「Questa」と「Veloce」を1つのセットとして使えることが大きなメリット。デバッグの手法としては、オフラインデバッグ+リプレイ機能、オンラインデバッグ、GDB等の標準デバッガの使用など従来からの機能を継承している。
検証IPについては、検証IPの開発環境自体が刷新され、「Veloce」向けに性能をチューニングする仕組みや2006年に買収した英SpiraTech社の検証IP自動生成技術が取り入れられた。これにより全ての検証IPがQuesta/Veloce互換はもちろん、Questa Sim/Questa Formal/Veloce/Vistaすべての環境で共通利用することが可能に。検証IPの互換性はQuesta/Veloce間のテストベンチの再利用やテスト環境のスムーズな移行に大きな効力を発揮するもので、これは検証IPを自社開発しているMentorの大きな強みの一つと言える。
今回発表された「EVP」に込められたMentorの思想は、これまで個別の検証ソリューションとして成り立っていた「Questa」と「Veloce」の融合で、検証手法、デバッグ環境、検証IPを軸に様々な共通化を図る事により、Mentorはエミュレータを中心とした統合された検証環境を実現している。将来的には、この「EVP」にFPGAプロトタイプやESの実機テストなどへのインタフェースも追加する方向で開発が進められているようだ。
※画像は全てMentor提供のデータ