SpringSoftが第3世代のデバッグ・ツール「Verdi3」を発表-GUI、FSDB、パーサーを刷新
2012年3月5日、カスタムIC設計環境ならびにハードウェア検証・デバッグソリューションを手掛けるSpringSoftは、同社の旗艦製品「Verdi」の次世代版「Verdi3」を発表した。
今回発表された「Verdi3」は、同社の提供する業界デファクトのデバッグ・ツール「Dubbusy」、「Verdi」に続く第三世代製品で、既存の「Verdi」を改版したもの。大きな機能追加が実施されたというよりは、ユーザービリティが高められより使い易くなったというのが妥当な表現で、幾つかの変更が加えられた。
まずGUIがQTベースのGUIに刷新された。QTはC++ベースのGUIフレームワークで、Adobeなどの汎用ソフトでも採用されている事で有名。最近では各種EDAツールでもQTベースのGUIへの移行が進んでいる。既存の「Verdi」はMotifベースのGUIであったが、「Verdi3」では軽くてカスタマイズ性が高いQTベースのGUIに変更され、ツールの操作性が高められた。例えばドラッグ&ドロップで複数ウインドウを統合したり配置変更したりできる。
※画像はSpringSoft提供
次に「VIA(Verdi Interoperability Apps)」の容易なインテグレーションが可能となった。SpringSoftは、「Verdi」用のカスタム・アプリを開発するためのインフラとして、GUIおよびデータベース(KDB/FSDB)のAPIを公開し専用のWebサイト「VIA Exchange」を運営しているが、このインフラを用いて開発されたカスタム・アプリの統合やサードパーティー・ツールの接続が容易となった。「VIA Exchange」には既に600名以上の登録ユーザーが存在しており、複数企業から60種近いカスタム・アプリが提供されている。これらを利用することでユーザーは「Verdi3」を独自にカスタマイズすることが可能で、当然オリジナルのカスタム・アプリも開発できる。先日発表された「Verdi」とSynopsys社「Protocol Analyzer」の連携にもこの「VIA」が利用されているようだ。
※画像はSpringSoft提供
そしてもう一つ。機能面の強化としてVerilogパーサーとシグナル・データベース「FSDB」も刷新された。Verilogパーサーは自社開発の最新版に置き換えられ、コンパイル時間が最大で約30%短縮され、使用メモリも最大約75%削減可能となった。また、SystemVerilogがフルサポートされた。「FSDB」については改良された最新の「FSDB 5.0」が用意されファイルサイズを従来比70%程度に小型化できるようになったほか、データの読み出しとダンピングがマルチスレッドで実行できるようになり、読み出し速度が約2倍(4コア利用)、ダンピングに要する時間は半分程度(約45%削減)となった。
※画像はSpringSoft提供
尚、「Verdi3」は現在β版がリリースされており、正式版は2012年4月にリリースされる予定。SpringSoftは顧客満足度向上の方針を長年貫いており、今回の機能向上についてもユーザーニーズへの対応の一貫として、既存の「Verdi」ユーザーには無償で「Verdi3」を提供するという。ちなみに同社の顧客数は世界で700社近くあり、その多くは「Verdi」ユーザーと推定される。