次世代フォーマット「ODB++」でPCB設計と製造をダイレクトに繋ぐ-Mentorの新戦略
2011年5月25日、Mentor Graphicsは、PCB設計および製造に関する同社の新たな戦略と合わせて、日本におけるPCBビジネスの新体制を発表した。
Mentorのシステム・デザイン部門のJohn Isaac氏(Director of Market Development)によると、Mentorは2010年3月にイスラエルのValor Computerized Systemsを買収した事により、同社の保有していたPCB向けDFMツールおよびPCB実装向けの生産管理を入手すると同時に、Valor Computerized Systemsが株式の半数を保有する同じくイスラエルのFrontline PCB Solutionsのソリューションも手に入れる事が出来た。
Frontline PCB Solutionsは、基板設計の最適化CAM「InCAM」およびPCB製造前プロセスの自動化ツール「InPlan」を手掛けており、これらソリューションとMentorおよびValorのソリューションを組み合わせる事で、PCBの設計・製造プロセスをより緊密にそしてより効率的に繋ぐことが可能となった。
※画像はMentor Graphics提供のデータ
具体的には、Mentor既存のPCB設計スイート「Expedition Enterprise」とValorのPCB向けDFMツール「vSure」の統合によりPCB設計段階でのDFMチェックが可能となったほか、「Expedition Enterprise」→「vSure」→「InCAM」と繋がるPCBの設計・製造プロセスがPCBのデータフォーマット「ODB++」によって統合された。
※画像はMentor Graphics提供のデータ
「ODB++」はValorが開発したPCBデータフォーマットで、日本国内で広く利用されている「Gerber」フォーマットに取って代わるもの。「ODB++」は「Gerber」だけでは不十分だったPCB製造に関する情報を包括的に統合した次世代PCBデータフォーマットで、日本国内では未だ馴染みが薄いが既に日本以外の海外ではPCB設計および製造のデファクト・スタンダードとなっている。
PCBのデータフォーマットが「Gerber」から「ODB++」に代わると何が起こるかと言うと、今までは非常に面倒な作業であった設計から製造へのデータの受け渡しが楽になる。従来手法では「Gerber」データだけではPCBを製造できないため、言わば「リバース・エンジニアリング」的な対処によって、CADデータから作られたデータをCAMに渡すという非効率な作業を行なっていた。
※画像はMentor Graphics提供のデータ
驚くべきことに世界が「ODB++」に移行する中で日本国内では未だ「Gerber」ベースの従来手法が根付いており、PCB設計・製造においても「ガラパゴス状態」になっているという事。Mentorは今回のPCB設計・製造ソリューションの統合を機に日本市場においても「ODB++」ベースのPCB製造手法への移行を促したい考えだ。
尚、今回の発表の際には、既に「ODB++」ベースのMentorのPCBソリューションへ移行した日本の大手企業の事例が紹介された。同事例によるとMentorのPCBソリューションにより、生産性は30%向上、1回の試作を削減できるほどの工数削減効果も得られているという。
MentorのPCB分野における市場シェアは2010年時点で50%。設計および製造ソリューションの統合によりMentorは更なるシェア拡大を目指す構えだ。
※画像はMentor Graphics提供のデータ
※メンター・グラフィックス・ジャパン株式会社