システムレベルのシミュレーション技術を核とした、バーチャル・プロトタイピング市場の上位3社がこの1週間で相次いで買収(買収合意含む)された。
2010年2月3日、シノプシスがVaST Systems Technology社を買収
2010年2月5日、ウインドリバーがVirtutech社を買収
2010年2月9日、シノプシスがCoWare社を買収へ
シノプシスが買収を発表したVaSTとCoWareの2社は、古くは協調シミュレーターと呼ばれていた頃からソリューションを提供しているバーチャル・プロトタイピングの老舗で、同市場シェアの半分以上は両者で占められていると言われている。
VaST社は、早くから「ソフトウェア開発」をターゲットとしたソリューションとしてシミュレーター「CoMET/METeor」を売り出し、複写機、デジカメ、自動車といった分野を中心に顧客を獲得。シミュレーションの速さや日本製マイコンモデルのラインナップで顧客の支持を集めていた。
一方のCoWareは、「SoCアーキテクチャ設計」をターゲットとしたハードウェア設計向けのシミュレーターとして「N2C」を売り出し、C言語設計創成期に多数の顧客を獲得。その後、SystemC言語ベースのシミュレーター「Platform Architect/Virtual Platoform」にリニューアルし、携帯電話、複写機、デジタル家電、といった分野でARMユーザーを中心に「ソフトウェア開発」ニーズも含めて顧客を増やしていた。
ウインドリバー(インテル)が買収したVirtutechは、AMDと共同開発した経緯を持つOS/ミドルウェア開発をターゲットとしたシミュレーター「Smics」を売り出し、OSベンダなどの顧客を獲得。元々はx86アーキテクチャ向けのソリューションという立ち位置であったが、その後、ターゲットとするCPUを増やしソリューションを拡大していた。
Virtutechは、ハードウェア/SoC開発向けにケイデンスと連携した活動も見せていたが、今回発表されたウインドリバーによる買収によって、いわゆる一般的なESL市場からは姿を消し、インテル/ウインドリバーのユーザー向けのソリューションとして残る形が予想される。
VaSTとCoWareについては、既に多数の顧客が存在している事から、シノプシスが以前買収したハードウェア・プロトタイピングの「HAPS(旧シンプリシティ製品)」と「CHIPit」のように、製品名を残し、両ソリューションを従来通りの形で存続していくと思われる。
シノプシスは、バーチャル・プロトタイピング用のシミュレーターとして、旧Virtio社製品「Innovator」を既に買収により保有していたが、今回、同分野の上位2社を一気に買収することでバーチャル・プロトタイピング市場をほぼ独占。これまで手薄だったESLソリューションが一気に強化される。シノプシスの包括的なソリューションにより、ゆくゆくはバーチャル・プロトタイピングからの実装も夢ではなくなりそうだ。
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