2007年1月26日、パシフィコ横浜アネックスホールにて、「システム・デザイン・フォーラム2007」が開催され、毎年EDSFairの恒例となったSystemCとSystemVerilog2つのユーザ・フォーラムが行われた。
関連ページ:http://www.edsfair.com/conference/systemdesign.html
200名近くが参加した午前中の「SystemCユーザ・フォーラム2007」では、OSCIのPatrick Sheridan氏(コーウェア)によって、リリース間もない「OSCI TLM 2.0ドラフト版」の概要説明が行われた後、JEITAのSystemCタスクグループとSTARC高位設計開発室のSystemC関連の活動状況が紹介され、最後にソニーにおけるSystemCからの動作合成事例が発表された。
Patrick Sheridan氏によって紹介された、「TLM 2.0」の機能アップのポイントは大きく2つ。一つはタイムド及びアンタイムドTLMのモデリングとその相互運用が可能となった点、もう一つは、トランザクション解析用のインタフェースが追加された点。現在これら追加仕様に対するユーザレビューを収集中で、今年6月のDACにて「TLM 2.0」を正式リリースする予定。この「TLM 2.0」によって、仮想プロトタイピングやシステムレベルのアーキテクチャ設計などにおけるSystemCの利便性は更に高まるとされている。
尚、JEITAのSystemCタスクグループによって発表された、TLM利用状況に関する独自の調査結果によると、日本国内よりもヨーロッパの方がSystemCのPV/PVTレベルを活発に利用。日本ではハード開発でCAレベルのTLMを利用しているケースが多く、TLMの高速性が生かされておらず、また、独自のAPIの使用などによって再利用性も阻害されていると指摘。早期にPV/PVTレベルのメソドロジを確立することがTLMメソドロジ成功の鍵とし、その為に必要な「TLM API」の標準化に向けて、同タスクグループでは、OSCIへフィードバックを続けているとの事であった。
また、TLM関連の活動とは別にJEITAのSystemCタスクグループでは、SystemCによる設計生産性の向上に向けて、SystemCの「動作合成スタイルガイド」の必要性を提言。各社動作合成ツール固有の機能・ノウハウに囚われず、より動作合成の効果を引き出し、より合成用記述の再利用性を高める事を目的とした、「動作合成スタイルガイド」の有るべき姿を導入/初級編/上級編の3段階、計9章の章立てでまとめたという。
※発表では紹介されなかったが、この提言を受けた「SystemC動作合成用コーディングガイドライン(仮称)」が、RTLのコーディングガイドラインで実績のある株式会社エッチ・ディー・ラボより、今年3月にベータリリースされる予定となっている。
一方、STARCの高位設計開発室では、トランザクションレベルの設計メソドロジ「STARCAD-SLD」の開発の一環として、「TLMモデリングガイドライン」の開発を進行中。定義が曖昧なTLMの抽象レベルや各モデルの使用目的などを明確化し、TLMの再利用性向上を目的とした、TLMのモデリング及びモデルのリファイメント手順に関する設計者視点のガイドラインを作成しており、予定では2007年度中にまとめる方向で、今年3月頃には何かしらの成果発表を行う予定だという。
これら各発表からも分かるように、SystemCの利用形態はハードウェア開発に留まらず、TLMを中心としたハード/ソフト開発に現実的なレベルで大きくシフトしており、「使える/使えない」という議論を超えて、如何に効率良く、そしてグローバルに利用するかという方向に向けて、TLM仕様の進化と平行して各種ガイドラインの策定がEDAベンダの枠を超えて加速している。
※OSCIホームページ:
http://www.systemc.org
※JEITA SystemCタスクグループ:
http://eda.ics.es.osaka-u.ac.jp/jeita/eda/ssc/index.html#
※STARC 高位設計技術開発:
http://www.starc.jp/kaihatu/sldgr/index.html
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