2006年3月22日、東京コンファレンスセンター・品川にて、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の主催する「システム設計環境セミナー」が開催され、JAXAのプロジェクトの下で開発されたシステムレベル設計ツール「ELEGANT」の全容が明らかにされた。
関連情報:http://www.jaxa.jp/pr/event/2006/20060322_kenkyu.pdf(JAXA)
「ELEGANT」は、JAXAが試作した宇宙用の電子機器設計支援システムで、旧宇宙開発事業団の時代に計画され、国内各社の協力によって2年がかりで開発されたもの。 主に書き換え不可能なアンチヒューズ型FPGAを用いる宇宙用の電子機器設計の開発効率を高め、RTLよりも高い抽象レベルの設計資産を活用することを目的として研究開発が開始されたという。
「ELEGANT」は、一言で言うとシステムレベル設計の統合環境で、下記大きく4つのサブシステムによって、C言語で記述されたシステム仕様から論理合成可能なRTLの出力までをカバーしている。
■設計詳細化サブシステム:
株式会社インターデザイン・テクノロジーとカリフォルニア大学アーバイン校が共同開発した「SER」
■動作合成サブシステム:
日本電気株式会社が開発した「Cyber」
■シミュレーションサブシステム:
株式会社インターデザイン・テクノロジーの開発した「VisualSpec」
■形式検証サブシステム:
株式会社富士通研究所の開発した「Venus」
「ELEGANT」の入力となるのは、システム記述言語「SpecC」で記述されたシステム仕様で、まず設計詳細化サブシステム「SER」を用いてシステム仕様記述の段階的なリファインメントを行う。「SER」は仕様記述を実装モデルへと自動的に導くためのツールで、設計者の指示に応じてリファインメントしたモデルを自動生成してくれる。最終的には、動作合成に適したピン精度の通信モデルを生成し、後工程の動作合成へと繋げる。
「SER」で生成されたピン精度の通信モデル(SpecC)は、インターデザインの開発した言語コンバータを介して「Cyber」に入力され、動作合成結果として論理合成可能なRTLとシミュレーション用のサイクル精度のSpecCモデルが出力される。
これら動作合成の入出力モデル、および「SER」で生成される各抽象モデルは、「VisualSpec」上でシミュレーションできるほか、ISSを接続した協調検証も可能。STARCの技術を用いて製品化された協調検証ツール「FastVeri」を組み合わせれば、高速なサイクル精度の協調検証やトランザクション精度の性能解析も可能で、「VisualSpec」にはプロファイリングツールやクロスデバッガなども装備されている。
また、形式検証サブシステム「Venus」では、デッドロックやデータ競合の基本的なプロパティ検証に加え、人手によるモデル変更や「SER」でのリファインメント結果の等価性検証を行う事が可能で、シミュレーションサブシステムではカバーできない部分を補完する形となっている。
尚、「ELEGANT」の各サブシステムのうち、シミュレーションサブシステム「VisualSpec」は既にインターデザイン・テクノロジーより販売中で、設計詳細化サブシステム「SER」も同社より販売される予定。動作合成サブシステム「Cyber」については、NECが販売を計画中としており、宇宙分野に限らず一般の民生機器設計者もこの「ELEGANT」をいずれ利用可能となる見通しである。また、JAXAは、平成18年度に「ELEGANT」の第三者評価を実施する予定で、セミナーにてその応募要項を発表。希望者は条件を満たせば「ELEGANT」を実際に評価できる可能性がある。
※「ELEGANT」の評価に関する詳細は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)にお問い合わせ下さい。
ELEGANT-EVAL@jaxa.jp
http://www.jaxa.jp
※株式会社インターデザイン・テクノロジー
http://www.interdesigntech.co.jp
※カリフォルニア大学アーバイン校「CECS-UCI」
http://www.cecs.uci.edu
※日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp
※株式会社富士通研究所
http://jp.fujitsu.com/group/labs
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