パシフィコ横浜で開催されたEDSFair2006で目にした、NEC(日本電気株式会社)のブースおよび出展者セミナー。
NECの出展者セミナーは、「システムLSI向けC言語ベース設計・検証環境Cyber Work Bench」というタイトルで行われ、26、27日の両日とも定員50名に対し立ち見の出る盛況ぶり。
45分という短い時間で、動作合成ツール「Cyber」を核とした、Cベース設計環境「Cyber Work Bench」(以下、CWB)の全容が明らかにされた。
講演を行ったNECシステムデバイス研究所の若林氏によると、CWBの基本的なコンセプトは、「All-in-C」を実現することによる「脱RTLデバッグ」。すなわち、システムLSIの設計および検証の全てをC言語で行い、RTLによるデバッグを無くすというもので、データパス系のモジュールに限らず、タイミング制約のある制御系モジュールやバスI/Fなども全てC記述から合成し検証もCで行う。
CWBには、そのための環境が一通り整備されており、動作合成エンジンの他に、バスインタフェース生成、プロパティ・チェック、C-RTL等価性証明、ハード/ソフト協調検証などを行う事が可能。設計環境としての適用実績も多数あり、昨年度は売上500億円相当のチップ設計に利用されたという。
セミナーでは、CWBの各機能について様々な実例を交えながらの説明が行われたが、その中でも印象的だったのは、以下の3点。
1.Cyberは、合成結果をコントロールできる数百の「ギア」(合成オプション)を持っているため、うまく使いこなす事が出来れば、論理合成よりも良い結果を出すことが可能。ビタビ・デコーダの合成なら殆ど勝てる。
2.バスインタフェースの自動合成機能は、バスの仕様記述からCコードを自動生成するもので、それを更にCyberにかけて使用する。最大のメリットは生成されたバスは「絶対繋がる」という事と、バスの変更などに柔軟に対応できる事。
3.Cによるプロパティ検証はプロパティを考え易く、効果も高い。CWBのプロパティ・チェッカには、ハードはこうあるべきという汎用プロパティが予め用意されているほか、プロパティを翻訳する機能も備えられており、プロパティを波形で見ることもできる。
若林氏によると、当初NEC社内ではCyberの合成能力が褒められていたが、最近はその検証能力が高く評価され、CWBを用いる事でES前にバグを潰せるようになり、ES後のバグ発生率は僅か5%になったとの事。
また、Cによる検証手法が確立できたため、Verilogシミュレーションに費やす時間はかなり減ってきており、Verilogシミュレーションを行うにしても心配だから「念のため」というレベルでになっているという。
その他、若林氏は、様々な仕様変更に対応できるというCで設計資産を持つ事の有用性や、Cベース設計を行う事によって、ハード屋さんとアルゴリズ屋さんにおける「人間の協調設計」も可能になると語っていた。
尚、未だ具体的な時期は発表されていないが、CWBはいずれ外販される見通し。
現在はNEC社内およびNECの特定顧客の利用に留まっている。
※NEC CWB問い合わせ窓口 info@cad.jp.nec.com
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