2005年9月9日、キャッツ株式会社(横浜市・港北区)の第11回ZIPCユーザカンファレンスが新横浜プリンスホテルで開催され、300名近くの関係者が集まった。
同イベントはタイトル通り、組み込みCASEツール「ZIPC」のユーザを中心としたカンファレンスで、毎年ZIPCユーザによる様々な適用事例が発表されているが、今回は、同社の開発するSystemC言語のデバッグ環境「SystemC Debugger」に関するユーザ事例が2件発表された。
最初の発表は、大日本印刷株式会社の梅海 勝浩氏(電子デバイス事業部、電子デバイス研究所)による社内ソフトIP(イメージ・センサ)をハード化したという開発事例で、アルゴリズムを起点としたSystemCによる設計フローの詳細が語られた。
発表された大まかな開発ステップは以下の通り。
1.イメージ・センサのアルゴリズムをMATLABを使用して検討
2.MATLABの出力からSystemCのアンタイムド・モデルをハンド・コーディング
3.アンタイムド・モデルをサイクルアキュレート・モデルへ段階的にリファインメント4.SystemCモデルのHDL変換(RTL変換)
5.FPGAに実装
SystemC Debuggerは上記2、3の作業フェーズで適用され、検証において効果を上げたと言う。「最も大きな効果をあげたのは、SystemC固有型変数のウォッチ機能。ハード特有の様々なビット幅をデバッグする上でとても役に立った」(梅海氏)
続いてサンデン株式会社の岩崎 渉氏(技術本部、技術開発センター)が無線通信モジュールの開発事例を発表した。
SystemC言語の習得から開始したプロジェクトは、C#によるアルゴリズム検討から始まり、最終的にハードウェアとしてFPGAに実装するというもので、ハード設計経験の無いソフトウェア技術者が約3ヶ月で一通りの作業を終えたという。「ハードの知識、HDL言語の知識が無かったため、SystemCのコーディングやRTLで提供されるIPのカスタマイズに予想以上の工数がかかってしまった。経験者であればかなりの部分の工数を削減できるはず」(岩崎氏)
岩崎氏によると、SystemCによるコーディングを行うフェーズでSystemC Debugger を適用し、検証・デバッグ面で大きな効果を得ることが出来たとし、その最大のメリットとして「SystemCのコードをSWとしてもデバッグできるしHWとしてもデバッグできる」という点を挙げ、Visual Studio.NETのプラグインツールとしての利便性を強調した。
尚、今回発表された2つの事例では、いずれもSystemCのコーディング以降のフローにおいて、キャッツ社が代理店となっている動作合成ツール「DesignPrototyper」(開発元:株式会社礎デザインオートメーション)が適用されており、それぞれ事例発表の中で動作合成ツールに関しても触れられていた。
「DesignPrototyperはC言語入力にて以前から使用しており、かなり重宝している。対応間もないSystemC入力には未だ制限が多いので今後に期待したい」(大日本印刷株式会社梅海氏)
「DesignPrototyperは国産ツールという事で、サポート面での期待と導入コストの低さで採用を決定した。コーディング上の制約をおさえ、うまくコードをリファインメントすることによって、合成結果の品質を上げることが出来た。」(サンデン株式会社岩崎氏)
|ページの先頭へ|