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【48DAC】第48回Design Automation Conference-今年の主役たち

2011年6月5日-9日、米カリフォルニア州サンディエゴで第48回Design Automation Conferenceが開催された。

48DAC公式ページ

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4年ぶりのサンディゴ開催となった今回のDAC。出展社数は前回アナハイム開催の47DACを僅かに上回ったが、2007年サンディエゴ開催の44DACと比較すると、その数は248社から178社へと約30%減少。多くの関係者が口にしていたように、その開催規模は確実に小さくなっていた。

来場者の数も同様で全体的に人は少な目といった印象。EDAユーザーとしての日本からの参加者は30-40名程度といったところで、「アジア企業からは多数のエグゼクティブが来ているのに・・」と嘆く声も耳にした。

DAC事務局の発表によると、48DACで発表された論文156本の地域別内訳は、米国50、アジア31、欧州19で、EDAの売上と同じく米国がリードし、それにアジアが追従するという形が論文数にも見て取れた。しかし米国発の論文と言っても発表者は中国人やインド人というケースも多々あり、EDAコミュニティにおけるアジア勢の力がより強くなっているという印象を受けた。

論文の内容的には、当然ながらEDA技術関連の論文が61%と最も多く、次いでソフトウェア開発も含むEmbedded技術関連の論文が35%だった。DACの論文選考委員会としても、組込み分野の取り込みを意識して、Embedded技術関連の論文の採択を増やしたという推測が妥当だろう。

今年の48DACでは一つのキーワードとしてEmbeddedを掲げ、様々な形でEmbedded関連のイベントが組まれていたが、印象としては特に大きなインパクトもなく、特設されたEmbedded Systems and Software Zoneも展示は10数社でほぼ馴染みのEDAベンダが顔を連ねていた。

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では今年のDACの主役は何だったか?

やはり、昨年に続きその存在感を大きく示したのは半導体ファウンドリで、TSMCとGlobalFoundriesという2大半導体ファウンドリが巨大なブースを構え、最新の28nmプロセス技術とそれに対応する各EDAパートナーとの連携を強くアピールしていた。TSMCはDAC直前に最新のリファレンスフローを発表したが、このAMS/Digitalそれぞれのフローに採用されたというEDAベンダ各社のアナウンスは17件にも達した。これまで半導体ファウンドリの採用という「お墨付き」は主にバックエンド工程のツールが積極的にアピールするものであったが、TSMCはそのリファレンス・フローをAMSフローやシステム・レベルのデジタル設計にまで拡張しており、今後そのお墨付きを狙うEDAベンダは更に増えそうだ。また、今年のDACでは、Tower SemiconductorやSamsung Electoronicsが半導体ファウンドリとして初出展。Samsungは今後の20nmプロセスも含めたファウンドリ・ビジネスのロードマップをアピールしていた。

【TSMCリファレンス・フロー採用のアナスンスをした企業】

 ・Agilent
 ・Apache
 ・ATopTech
 ・Atrenta ※TSMCのソフトIP検証フローで採用
 ・Cadence
 ・Ciranova
 ・CLK
 ・Dorado
 ・ExtremeDA
 ・Helic
 ・Magma
 ・Mentor
 ・MunEDA
 ・Sigrity
 ・Solido
 ・SpringSoft
 ・Synopsys

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一方、半導体ファウンドリの存在感もさることながら、やはりEDA大手3社は今年もDACの主役として大規模ブースを展開。今年は各社それぞれの戦略・特徴が分かり易く目に映った。

まず業界TOPのSynopsysは、トータル的なソリューションの展示を行なう一方で、自社の参加している各種標準化活動やアライアンス関連の「Standardsブース」や、ARMおよびGlobalFoundriesとのコラボレーションをアピールする「Partnerブース」を個別に構え、自社ソリューションを核としたエコシステムの拡張を強調。更にクラウド関連ソリューションのブースも作り、業界に先駆けて打ち出した「グラウドEDAビジネス」の具体的なビジネスモデルを紹介していた。
(※Synopsysブースレポートは別途詳細をアップ予定)

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Mentorは、物理検証、機能検証に次ぐ大きな柱となりつつあるESLソリューションを今年もアピール。高位合成ツール「Catapult」の新機能「TLM合成」の発表や、バーチャル・プラットフォーム「Vista」と組込みソフト開発環境「Sourcery CodeBench」の連携の発表などもこの48DACに合わせて行い、Embedded関連のソリューションも含めたESL分野における同社のリーダーシップを強く示していた。今年も同社のチェアマンWally Rhines氏がモデレーターを務めた9th Annual ESL Symposiumは、恐らく過去最高と思える数の参加者を集めていた。
(※Mentorブースレポートは別途詳細をアップ予定)

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Cadenceは、昨年を上回る規模の大きなブースを構え、非常にオープンなスタイルでESLからバックエンド、アナログ、PCBに至る包括的なソリューションを展示。そのプロモーションにはDAC用に製作したiPhoneアプリを活用していた。「EDA360 Theater」というオープン・スペースでは連日様々な大手顧客が事例を紹介しており、同社が1年前に掲げた「EDA360」というビジョンの「その実」を生の声で聞く事ができた。また、同社ブースではパートナー各社によるソリューション紹介も連日行なわれ、IMECやTSMCとのコラボレーションについても詳細を発表していた。様々な新製品、新技術の内容もさることながら、そのスタンス・コンセプトに何か新しいCadenceを感じさせた。
(※Cadenceブースレポートは別途詳細をアップ予定)

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更に大手EDAベンダ、半導体ファウンドリと合わせて48DACの主役だったと言えるのが、「3D IC」、「ESL」という2つのキーワード。

「3D IC」については、Interposerによる2.5DおよびTSVによる3Dの設計にフォーカスしたセッションが計7つ開催され、その実現性やキラーアプリ、今後のロードマップなどについて様々な議論が展開された。米GSA(Global Semiconductor Alliance)は48DAC用に「3D IC設計&サービス ツアーガイド」なるものを作り配布していたが、大手3社をはじめとする計13のEDAベンダが「3D IC」関連のソリューションを展示しており、半導体各社が会場に持ち込んだ「3D IC」のテスト・ウエーハやテスト・チップを目にする機会も多かった。「3D IC」の実現及び普及に向けては、コスト、製造性、設計インフラの3つが大きな壁と言われているが、幾つかのセッションを聴いた感じでは、まだまだ設計面での課題は多いようだ。

【48DACに出展していた「3D IC」関連のEDAツールベンダ】

 ・Apache
 ・Atrenta
 ・Cadence
 ・Coventor
 ・Docea
 ・E-System Design
 ・Gradient
 ・Magma
 ・Mentor
 ・Micro Magic
 ・R3Logic
 ・Sigrity
 ・Synopsys

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※画像はTSMCの3D-ICウエーハ

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※画像はXilinxの2.5Dチップ。中央がInterposer部。


「ESL」については、ここ数年毎年注目が集まっているが、Embeddedとの関係性も高く今年もHOTなキーワードの一つとして関係者に認知されていたようだ。それを示す一つのエピソードとして、ESL推進論者の業界のご意見番Gary Smith氏が遂に「今年はESLへの移行が完了する」と言い切った。これは必ずしも全ての設計者がESLに移行するという意味では無く、「ESLからの回路設計フローが整う」というニュアンスに近い。同氏曰く「回路図からRTLへの移行が完了したのが1996年」という事で、15年経過し設計コストを引き下げるためにもESLへの移行が必要というメッセージであるようだが、それに呼応するかのように大手各社はESLからのインプリメント・フロー構築に力を注いでおり、あながちいいかげんな指摘とは思えない。実際に48DACに出展した「ESL」関連ソリューションを提供するEDAベンダ数※は全出展社の約17%にあたる31社に達しており、各ESL関連セッションでは、ESLの必要性よりもESLを用いた具体的な設計方法論が語られるケースが増えた印象が強かった。(※Gary Smith EDA社がESLベンダとカテゴライズする企業を参考に出展社数から抽出)

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※画像はGary Smith氏

【48DACに出展していた「ESL」関連のEDAツールベンダ】

 ・Agilent      ・Aldec
  ・Apache(Sequence)  ・ARM
  ・ApS Brno(Codasip)  ・Atrenta
 ・Avery           ・Axiom
 ・BEEcube   ・Bluespec
 ・Breker           ・Cadence
 ・Calypto           ・Carbon
 ・Chip Path   ・CoFluent
 ・Cortus           ・Docea
 ・Duolog           ・Entasys
 ・EVE          ・Forte
 ・Mentor           ・Mirabilis
 ・NEC          ・Rocketic
 ・Semifore   ・Sonics
 ・SpringSoft   ・Synopsys
 ・Vayavya

以上、振り返ると今年のDACは、半導体ファウンドリ、大手3社、3D IC、そしてESLというキーワードが主役と言える内容であったが、4年前の44DACではDFMが話題の中心を占めていた事を考えると、数年先には現時点では想像しなかった新たな主役が台頭している可能性も十分にある。プロセスの微細化に対応するEDA技術の進化がDACの話題の基本線であることは間違いないが、3D IC技術とESL技術という定着しつつある別ベクトルの技術動向についても引続き注目していきたい。次回の49DACは6月3日から7日、サンフランシスコにて開催の予定。

尚、48DACのBestPaper他、主要な各アワードの受賞者は以下の通り。

・Best Paper
「Automatic Stability Checking for Large, Linear Analog Integrated Circuits」
 Parijat Mukherjee - Texas A&M Univ., College Station, TX

・USER TRACK Best Paper
 「Pattern-Based Physical Verification in the Design Flow」
 Cristopher Magalang - GLOBALFOUNDRIES, Singapore

・ACM/IEEE A. Richard Newton Technical Impact Award
  Jason Cong - Univ. of California, CA

・2010 Phil Kaufman Award
  Pat Pistilli - Chairman MP Associates

48DAC

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =

(2011/06/13 )

 

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